劇的ビジネス小説552ページ!
発行者のSINYA OONOです。
今日は、
TOCとして工場の業界では有名な思考プロセスを考えていきたいと思います。
TOCとは、Theory of Constraintsの略。
意味としては、理論:Theory、の:of 、制約条件: Constraintsです。
合わせて、「制約条件の理論」。
「理論」も「の」もそれほど、
特別な言葉ではありません。
ここで一番キーワードになるのは、
制約条件: Constraintsですね。
理解を深めるために、
このキーワードの包含する意味をもう少し深掘りしておきましょう。
英語のconstrain(動詞)は、
〈人・物など〉を束縛する, 押し込める
《…することを》〈人・物など〉に強いる
《…を》〈人〉に制約する
などの意味があります。
ですから、
“辞職を余儀なくされる”とか、
“検閲によって規制される”、
“子供達が労働を余儀無くされる”、
“天候によって農業の発達が左右される”、
などの使われ方をしています。
あまりポジティブでない要因による因果関係。
こうであるゆえに、
こうなってしまう。
そうした関係性を示唆している言葉ということができそうです。
今回出てきている
TOCのC
英語のconstraint(名詞)は、
1-a) 《…を》束縛[圧迫, 制限]するもの
1-b) 束縛, 圧迫, 制限
2)《かたく》 (感情などの)抑制, 気がね; 気まずさ; ぎこちなさ
を意味しているといいます。
やはり動詞と同様に、関係して、
ポジティブでない要因の示唆する言葉になっているようです。
注意する内容は、
感情におけるポジティブでない要因もその語が含まれること、
そして、
1-bと1-aの違いには、
可算名詞、不可算名詞という違いがあります。
つまり、集合的に使われている名詞か否か、
数える名詞か、数えていない名詞か。
英語ではよく引き合いになりますが、
sheep羊は、
集合体としてsheepという名詞があって、
sheepsというと羊の皮を数えていることになる。
羊1匹1匹を数えるときは、sheepsと複数を表さないという原理があったりします。
英語の品詞における文法事項で、
ちょっと日本語的な感覚からするとわかりにくい部分かもしれませんが、
この可算名詞、不可算名詞の概念は英語独特であり、
かつ、
数にこだわる言語であることもわかるかと思います。
一方で、日本語は数にこだわらず、
ほとんどの名詞が、
集合名詞的に使われています。
この言語差による言語のユーザーの特性を分析しても面白いとは思いますが、
ここでは本論に戻りたいと思います。
しかし、このお話本論においても論議がより明確になります。
constraint(名詞)の複数形がタイトルに使われていますから、
制約条件というもの、
この場合は舞台が工場なのですが、
工場における生産を滞らせる要素、原因、制約条件を数え上げてみよ!
そのようなミッションが入っています。
ある意味、
ものごとの物的生産であれ、知的生産であれ、
成果物がYであるとし、
それがAという箱(いわば、工場でも、単一の人でも、チームでも、会社でもありうる)を経由して、
Xというものから成果物になるのであれば、
X→|A|→Y
という風に、
“A工場”が生産をしたということになり、
工場という定義を人、チーム、会社、システムなどに、
敷衍して考えることもできそうです。
さて、
ビジネス小説ということで、
私自身久しぶりに小説という類を読むことになりました。
この小説つまり、ストーリーを使うということに関する点、
これも触れてみたいと思います。
その本を紹介していなかったですね。
ザ・ゴールという本で、
この最初に考え出した(略して)制約理論
が紹介されています。
そして、それは小説で552ページもあるわけです。
そのストーリーはある意味劇的です。
残り3ヶ月で工場閉鎖という大ピンチから、
グループの内での抜群の収益率を誇る優秀工場になり、
主人公も工場の所長として解雇の危機から、
エリアの工場を管轄するマネジャーへと昇進することになります。
ある意味、ピンチはチャンス。
ピンチにしっかり向き合ったことで、
逆にチャンスに変えたという教訓も入っています。
作者は、エリヤフ・ゴールドラット。
イスラエルの物理の先生です。
ある意味、
この著者の実際のリアル・ストーリー(実話)が、
この小説に組み込まれているということもできるでしょう。
それは、
ジョナという科学者が、
主人公の工場改革を陰ながらアドバイスする姿で表されています。
コアな部分、
核となるアイデアをまずシェアしておきたいと思います。
イメージできる例えがやはりわかりやすいと思います。
人がいます。
人一人が例えば、鎖の一つの輪だとします。
そうするとある意味、
鎖の輪が連なった鎖(チェーン)は、
企業だったり、
グループだったり、
を表現します。
そして、その鎖(チェーン)にテンション(張力)が働きます。
引っ張る力ですね。
この引っ張れる力の合計が、
ビジネスの強度ということになるでしょうか。
チェーンの輪の一つ一つが、
同じ強度を持っていれば、
ある程度まで、
その張力に持ちこたえることができますが、
弱い鎖の輪があれば、
そこでチェーン全体が破断します。
このような鎖の輪の
モデルで考えることができるというのは、
話の最後の方で出てきます。
実は、このストーリーの個人的な
裏テーマは、
家族であり、
家族が主人公の様々なビジネス上の気づきを与えてようとしている、
与えているということに、
ようやくこの大ピンチで気づくようにもなっていく、
そのような裏だけど、
実はそっちのが重要じゃないかと思うようなテーマがあったりします。
その気づきの最たるものとして、
制約理論そのものを気づくきっかけになるのは、
子供のピクニックに行く下りです。
体格や荷物の差から、
目的地に列をなして歩いている子どもたちの
隊列に開きができてしまう。
このことが工場というものを一つの隊列と見ることから、
一つのモデルとして考えることが、
主人公の改革と気づきにつながっていきます。
このような人生そのものから学び、
子供たちの自由な発想から、
解決策の糸口を探したり、
希薄になっていた妻との関係を修復するストーリーが、
工場のピンチになる混沌とした状況を改善するプロセスが重ねられていたり、
この辺がビジネス小説の魅力だなと思います。
この制約というものを正しく捉えられると、
余剰能力というものも正しく捉えられるといいます。
まず、工場全体組織全体の生産のボトルネックになっている人、部門、機器、工程を見つける。
ある意味、この後のステップでもわかってきますが、
この制約の扱い方がポイントになってくるので、
ネガティブな因果関係という枠組みも変わってきます。
さて、そのボトルネックになっているものとボトルネックになっているものとを区別することで、
二つの管理の仕方が変わってくるといいいます。
頭の速い方なら、
すぐにわかってしまうかもしれませんが、
全体を規定しているボトルネック要素は、
当初まず、
その人や部門、機器、工程単体としての効率やコストで考えるのではなく、
組織全体コストがそこにかかってきていると認識すべきという
ちょっとしたパラダイムシフトがあります。
企業では、
効率化、効率化と言われる中で、
工場全体の最適化、お金につながる生産の最適化とは何かという
定義を今までの指標を入れ替えつつ
認識を入れ替えている。
そこがとてもミソの部分ですね。
面白いのは、
著者はやはりとても頭の言い方で、
スケジュールソフトを当初その考え方で組んで、
高額で販売し、
かなりの成果を出していたといいます。
しかし、このザ・ゴールを書くことで、
そのソフトを販売しなくても成果を出す工場が出てきてしまった。
ある意味、当時の著者としては、その小説でもう少し、
ソフトが売れればいいという意図もあったのかもしれません。
これが、やはり、人間の脳のアップデートをした方が、
はるかに良い効果を出すというある意味で、
当然だけれども、
著者も見えていなかった部分なのかもしれません。
それと面白いのは、
著者は、日本には翻訳本を承認せずに15年以上を経過したという点です。
その理由はというと、
日本とアメリカがまた貿易摩擦が再燃するだろうからというのが、
その理由だというのです。
グローバル化の波や中国の台頭やアジアその他の台頭を予測したり、
していないとするとある意味、世界的に疎まれていた日本の高度成長のこともやんわりとではありますが、
推測されます。
何れにしても、
日本の企業を意識したストーリーがいくつか出てきますから、
最適化というものの日本人に対するある意味でのリスペクトもここには入っているのかもしれませんね。
英文では、1984年。
2001年にこの本が日本語に出されて、早18年。
あっと言う間に、日本の製造業は、世界トップの勢いを失ったかに見えます。
しかし、
実は、
ここからまた新たな波が生まれつつある。
そんなことを感じさせる物語にもなっていましたね。
//////////編集後記////////////
今回は、TOC(Theory of Constraints):
「制約条件の理論」を取り上げました。
工場だけではなく、
知的生産にしても、
制約を見つけ、
アイドルタイムを許せる部分、
アイドルタイムを重点的になくす部分、
そして、
許したアイドルタイムを再活用する方法を模索する、
そのような思考の枠組みは、
全体思考においてとても有効だと思いました。
木ではなく森を見る全体観をある意味身につけた考え方ですね。
特に、その意味でも、
何かを生産することを包括的に見ている
マネジャーにとっては、
とても示唆的な文献だと思います。
「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」
何か適用に助けが必要だったら、
ご連絡くださいね。
さて、
投資理論をいろいろオーディオブックで聴いている時に、
成功にも、
確率的なラッキーと努力的なラッキーがあると言う話を聞きました。
最近見つけたこの若者はどちらでしょう?
もし、興味があったら、
のぞいてみてあげてください。
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